思ってることダダ漏れ芝居

左から

内山(ヒポリタ/ティターニア)

黒川(テーセウス/オーベロン)

神山(パック/フィロストレート)


ヨハクノート夏の本公演『真夏の夜の夢』対談企画、第2回は“思ってることダダ漏れ芝居”と題してお届けします!  


黒川 むかし、むかし、アテネに2人の男、2人の女、4人の若者がおりました。4人の恋愛関係は、それはもう非常に入り組んでおりました。


神山 その入り組んだ人間関係に妖精が介入することで、より入り組んでしまいました。一方、妖精たちは他愛のない王様と王妃の夫婦喧嘩、その一方人間たちのお祭りで王様たちの前で余興をする職人たちというのも芝居の稽古を進めている、という3つの軸が存在しますね。4人の男女、妖精の王様と王妃、人間の王様と王妃に劇を見せる人間の職人たち。


内山 森の中で起きた登場人物をめぐる様々なゴタゴタが解決しました。最後に人間の王様と王妃の婚礼の儀式が無事執り行われて、まだ解決してない問題も残っているけど、これでいいのだ。めでたしめでたし。

『真夏の夜の夢』の騒動の発端となるのは、魔法の惚れ薬なわけですが、皆さんもしも魔法が使えたら…?


黒川 あれですね。分身したいですね。ダブルブッキングした時に、間違えてバイトと稽古がかぶったときに使いたいです(笑)


神山 分身した時って、お互いの経験はどうなるんだろうね?


黒川 それは一緒になるんじゃない?あ、でも同時に別の舞台に出たりとかまですると、AKIRAの鉄雄みたいになりそうで怖いですね。


神山 分身しすぎるとね。


黒川 じゃあ、分身じゃないです。短い睡眠時間で疲れが取れる魔法がいいですね。本当のところ。


内山 なんだろう......今満たされてると意外と出てこないですね。


神山 うわー、幸せアピール。


内山 ごめんなさい(笑) 


黒川 食後に眠くならない魔法もいいな。


神山 すっごい現実的なところで攻めてくるね。もっとおっきいことしたくない?時間戻せるようになりたいとか。


黒川 使い方難しくないですか?ちょっと体調良くなるとでかで全然いいです。あとは毎月口座に10万円振り込まれるとか。


神山 そこ10万円でいいんだ(笑)


稽古をしていく中で、どんな印象を持たれましたか?


神山 西洋の人たちはめちゃくちゃ論理的に相手を、恋愛とかでもなぜ好きかなぜ嫌いかどのように好きかみたいなことをめちゃくちゃべらべらしゃべるって言うじゃん。日本人はあんまりそういうことしないよねみたいな感覚のずれ?はあるかも。 

 

黒川 みんなすごいしゃべりますよね。「お前が嫌いだ」っていうこと朗々としゃっべってるの、なんか面白くて好きです。


神山 その辺のかい離はやっぱり日本人がやるときには難しいって言うよね。ただ今回は臼杵くんも結構削ってるから。


黒川 もともとからはだいぶ減ってますよね。


神山 日本人的にしてるのか、ちょうど中間点で、今はまだどっちつかずな感じになっちゃってる。雰囲気みたいなものをつくっていきたいよね。


内山 言葉による説明が原作は多いですよね。さっき言ってた、何で好きなのかどのように好きなのか、っていうのがすごく難しい。そばにいて「好きだ」っていうのを感じるみたいなのって私たちの文化であると思うしそんなにしゃべる?いらなくない?と違和感もあるし。言葉でしゃべることによって何かが壊れてしまうかもしれないって感じます。


神山 日本人がシェイクスピアに感覚的に難しいと感じるのはそういうことなんだろうね。 


黒川 直球では物事を言いにくいってこと。


神山 日本人はそんなに普段から相手を説き伏せるようにしゃべってないよね。シェイクスピアはそこに修辞とか詩が加わるから。日常的にポエムをしゃべってる人間はさすがにいないと思うけど。


内山 やだ~、一緒にいたくない。


黒川 でもそれを見て観客は感情移入するわけだよね。今の僕らからするとめっちゃしゃべるねって感じるけど。


神山 日本人からしたら、そんなに喋るってことはこの人すげぇ怒ってるんだとか、ものすげぇ恋してるんだって思うけど向こうの人たちの感覚としてみれば意外と実はそうでもなかったりするのかな。


内山 演技面での「言っちゃう」ことについて考えると、言葉をしゃべることによって、例えば、好きだよって伝えるときにそのシチュエーションっていう型にはまってしまう、それがすごく好きだよって言葉の再現になってしまいがちなのかなって。

それは言葉が増えれば増えるほど勢いにのってしまうというか、それが役者としての表現にならなくなってしまう。再現...表象...説明......なんて言っていいかわかないですけど、言葉に従属してしまう感覚があって、気を付けないと、と思ってます。


黒川 好きをやるはずのに、好きの説明になってしまうのがダメで、登場人物が好きであることがそこにないとダメだってことだよね。


内山 でも言わなきゃいけないっていう。


黒川 相手に言うのに限らず、お客さんにも言いますよね。相手には聞かれてないどお客さんには聞かれてて、お客さんには聞かせてるっていう。改めて考えると不思議ですよねぇ。見やすいですけど。


神山 まあ、観てる側にはわかりやすくはあるけど。


黒川 安心感ありますよね。そんな人日常にいないもん。だいたいみんななんか内側では違うこと思ってて、難しい。


神山 思ってること全部言っている人がいるとしたら、それはたまにいる人だもん。


黒川 結構好きですよ、思ったこと全部言っちゃう人。


神山 ウィンズとか行くと結構いるんだよ。


黒川 ウィンズ?


神山 ウィンズって場外馬券売り場。全部口から出てるおじさん。「...前半の走りどうだったかな、いやでもなぁ、あっち、あっちがよかったかな...」って。その人はたぶん何をするにもしゃべりながら考えたりとかするんだろうね。「今日飲み行こうかな、でもちょっと、お金ねぇしな」みたいなことしゃべってるんだと思う。


内山 プライベートだだ漏れ(笑)


神山 「あ~、ネギ買うの忘れてた」みたいに全部言ってるんだと思う。誰が聞いてるわけでもなく。


黒川 たぶんいい人ですね。


神山 うん、すごくいい人なんだと思うけど。


黒川 『真夏』もじゃあ、みんな大体いい人なんですかね。


神山 ムッツリな人があんまりいないよね。ムスっとしたクラスの端で本ばっかり読んでる感じの人がいないね。


黒川 嘘をつく人がいないですよね。ほかの登場人物に対してもお客さんに対しても とりあえず全部わかられた状態で芝居をしてるっていう。今思ったことが全部見える状態で説明してる。自分が思ったことを言いながら次行くっていうのが入る。それが役者としての表現だったり演じるっていう部分で本当は自分が表現しなきゃいけないところを言葉でもってかれちゃってる部分が。

内山 今からやろうとする部分がセリフに書いてあるから、これ私言うんだっていうのがあります。  怒ってますって言って怒っちゃってるから、もう怒ってますって言っちゃったよ!って思いながら(笑)


黒川 私は怒ってるんだぞって言いながら怒ってるのは、確かにやりにくいですね。


内山 私、お芝居で結構間を使うんですよ。この人何考えてるのかとか、相手への状況を把握するために時間を使う。ただ今回はそれやると、これダメですよねっていう感じになっちゃう。間が似合わないというか、間が似合わなくないですかこの芝居? 


神山 似合わないというか、間があるとつまらない。


内山 かと言ってギャグのような間を作るんだったらいいのかってなると、ウケ狙ってる感じになっちゃって、ここまで間が難しい演劇は初めてお会いしました。


黒川 もう決まってますからね、戯曲の時点でやり方が。


神山 シェイクスピアは特にね、韻文調とか。


黒川 それを決まったやり方をおおむね守りつつ。


内山 そういえば、今イギリスの若者がシェイクスピアを読んだら古くせぇなって思うんですかね?万葉集みたいに見えるのかな。


黒川 まぁ、古いなぁとは思うでしょうね。僕らからしたら歌舞伎くらいじゃないですか?時代的には。


神山 井原西鶴は面白いけど文体読みずれぇな、みたいな、そんな感じなんですかね。


内山 落語を意識してるのかなって感じます。韻文の軽快さとか。一方で、そのキャッチ―な感じを表に立たせておいて、一見俳優たちが戯曲に従っているように見えるんですけど、稽古を重ねる度に、臼杵くんは俳優たちの身体を見ること大事にしていると思いました。ワークショップとかのチョイスとかを見てても言葉に全てつられて行かないように身体性にも比重を置きたい。戯曲と身体性っていうものをうまくバランスをとろうとしているんじゃないかなと思います。



神山 以前も出演したことあるんですけど、そのときは、この人ガバガバかよって思ったんですよ。結構何でもやらせてくれるから。今回も変わらずかな。 


黒川 結構何でもやらせてくれる?


神山 うん、逆に俳優が自覚的にならないとダメな部分がすごいたくさんあるなぁと。臼杵くんは一から十まで役者を縛り付ける演出家じゃないから、今回は非常に、自分も含め役者は頑張らなきゃなって思いますね。


黒川 僕が前回ヨハクノートに出たときは5人だったので、それよりだいぶ人数が増えたのと、結構いろんなテイストの役者さんがいるのがおもしろいですね。同じ台本を読んでいてもアプローチや捉え方がだいぶ違うメンバーなので面白いと思う。それは意識的に役者を選んだんだと思うんですけど。


神山 よくここまで畑が違う人を集めようと思ったなぁと思いましたね。劇団森、劇団木霊、早大劇研、それに立教も。 


黒川 幕の内弁当ですね。


内山 どれもおいしい(笑)


黒川 幕の内弁当もテイスト揃えてますけどね。


神山 中華幕の内?違うか。


黒川 ラーメンにプリンがついてるみたいな?


神山 回転寿司じゃない?


内山 あー、スシロー感ありますよね。


神山 スシローですね。


黒川 今回はスシローだと思ってきてください。


神山 プリンがあって、寿司があって、ハンバーグがあって。


黒川 うどんもあって。


神山 たこ焼きとかもあるよ。


黒川 ヨハクノートではなくスシローです。


内山 いいのかな?(笑)   


神山 本当に回転寿司みたいな芝居やるんで。1皿105円の芝居をします。


黒川 海鮮三崎港くらいにしません?


内山 ヨハクノートって商業演劇に振り切らずアングラに振り切らず、バランス型劇団だと思ってるから、やっぱりスシローかなぁ? 


神山 スシローはだいぶ的を得てる。回転寿司の、お寿司っていうちょっと堅めかなと思いきや気軽に行けるし、色んなものが味わえますよね。


内山 それだよね! 


黒川 久兵衛じゃないってところだよね 古典に関してバランスが取れているからそこから入っていただければいいと言うことですね。


内山 その通りだと思います。


神山 ジャンキーなシェイクスピア。


皆さんそれぞれの見どころは? 


黒川 ぼく赤貝で。 


神山 そうなるとどのシーンが赤貝かなってお客さん迷っちゃうから!


黒川 おすすめのシーンはラブシーンですね。ゴタゴタがあるのでそこを見ていただければと思います。 


神山 3つくらい色の違う人たちが出てくるから、赤身が好きな人でも白身が好きな人でも。 


黒川 川魚でも海魚でも。


神山 光物でも。


黒川 タコでもイカでも。魚卵もあるよ 


神山 あれもあるよ!豚トロとかアボガドとかも。


黒川 邪道系もね。


神山 どっかが好きになってくれれば。まぁ2つ嫌いでもどっかが好きになってくればなぁと思います。


内山 ねえ、質問なんでしたっけ!


黒川 おすすめの握り。 


神山 旬の握りは何ですか。劇中で握られる寿司の中で何が1番好みですか。


内山 私は、人間の方の王様と王妃様のセリフにはなってない仲の良さや、なんとなく醸し出す雰囲気が好きですね。ちょっと反シェイクスピア感がありますけど、シーンの端々で感じるほっこりした空気感を感じてもらえると嬉しいです。



神山慎太郎 Shintaro Kamiyama

俳優

早稲田大学教育学研究科卒。


学生時代から演劇を始め、昨年文学座附属演劇研究所に通うなどして修行中。国語教師として都内の中学高校で二年間教鞭をふるっていたこともある。


内山茜 Akane Uchiyama

舞踊家/俳優/振付家/演出家等

立教大学院映像身体学専攻修了

能や武術、舞踏、沈黙劇、残酷演劇などから影響を受ける。『表現とは何か』を大きなテーマとし、身体の負荷と言語イメージを二本柱に、演劇や舞踊といったジャンルの境を滲ませる作品作りをする。人肌くらげ代表(hitokura.org


黒川知樹 Tomoki Kurokawa

俳優/「蝸牛公社」担当者

東京大学総合文化研究科修士課程所属

ヨハクノート作品には『曾根崎心中』に出演。


巻末コラム~悲劇、喜劇、ロマンス劇~


シェイクスピアと聞いてどんな話をイメージしますか? 

「貴族がすげー争って死ぬ」

「でかい声でなんか叫んでる」

「人がいっぱい死ぬ」


とにかく“悲劇”のイメージじゃないでしょうか。実際、『ハムレット』や『リア王』など有名作の多く、恋愛のイメージが強い『ロミオとジュリエット』でさえ悲劇にカテゴライズされます。しかし、シェイクスピアおじさんが描くのはそんな病んだ話ばかりではありません。

例えば「貴族の娘がしがらみから逃げるために男装してたら嫌ってた男に告白の練習台にされる話(『お気に召すまま』)」や、「双子の商人と、双子の召使いが航海の途中でシャッフルされてしまい、兄と思って捕まえたら弟だったり、弟と勘違いされた兄が家を閉め出されたりする話(『間違いの喜劇』)。もうタイトルから喜劇ってついてますからね。「すれ違いコント」みたいなことです。 


そしてもう一つ、ロマンス劇というジャンルが存在します。特徴としては「ハッピーエンド」「魔法とか出てくる」「神話や神が出てくる」「文明的な場面と牧歌的な場面が混成」あたりでしょうか。これらの特徴が当てはまるシェイクスピア後期の作品群を「ロマンス劇」と言います。『冬物語』『テンペスト』あたりが有名です。 『真夏の夜の夢』は特徴としてはロマンス劇ですが、書かれた時期から喜劇に分類されます。一人でこれだけの作風を書き分けるの凄くないですか? 藤子・F・不二雄みたいですよね。 (臼杵)

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