アゲアゲシェイクスピア

左から

太田(フルート/妖精2)

山崎(ニック・ボトム:崎はたつさきが正式)

依田(ピータークインス/妖精1)


太田 だいぶ昔のお話で、アテネというところには侯爵様がいて、そこに4人の若者がおりました。ライサンダー・ディミトリアス・ハーミア・ヘレナこの4人のお話です。


山崎 まず、結婚式があると。その公爵様と奥さん予定の人が結婚式をするというおふれが出てくるということになりますね。そして、


依田 そして、その結婚式で余興をやっていいですよっていうお知らせがきて、それに対して余興をやるぞって盛り上がる人もいれば、その裏で私もこの人と結婚したいとか、俺は絶対したくないみたいな恋のいろんなシカクゴカクいろんな関係がどんどん恋愛模様がごちゃごちゃなっていくっていうお話です。


太田 ライサンダーとハーミアというカップルがいて、この2人は結婚したいんだけど、ハーミアのお父さんはディミトリアスと結婚させたがっています。公爵様にもそっちと結婚しなさいと言われてハーミアはとても困っています。


山崎 ディミトリアスとヘレナも一方通行になってしまっていると。そんな中で4人がひょんなことから森に集まることになりました。すると森には妖精のなかの妖精、妖精の王と王妃がおりまして、これがもう仲が悪いこと悪いこと。2人は何かにつけて喧嘩をするわけですね。


依田 妖精の中にはパックという遊び好きがおりまして、パックは王様に命じられて若者4人の恋を上手くいように仕向けようとするんですけど、ここで惚れ薬を使うわけですね。


太田 ところが、パックがうっかり惚れ薬を間違った相手の目に塗ってしまいます。もとも上手くいっていたカップルが上手くいかなくなり、片思いだったはずが逆の片思いになったり、4人は大騒動になります。


山崎 さらに妖精の王様は奥さんに一泡吹かせてやろうと思っていたので、奥さんの目にも薬を塗ってしまうわけですね。目を開けて最初に見たものを好きになってしまう薬を塗ってしまうわけです。しかも奥さんが最初に見た相手がお芝居の練習で来ていた職人のうちの1人。しかもいたずら者のパックによって変えられた化け物みたいなロバの姿に恋してしまうということでそっちはそっちで大混乱です。でも王様は若者4人が大混乱になっているのに気付くわけですよね。


依田 そしてそれに気づいた王様はもう一度、惚れ薬を元に戻すためにパックに命令して戻した結果、妖精の王様と王妃様は仲直りをして、最後は公爵様とお妃様の結婚式の場で若い男女4人の結婚式を挙げて、その前で職人たちが念願の劇を披露し、最後に大団円、めでたしめでたしとなるのでしたとさ。


がっつりしっかりまとめていただきました!



山崎 めちゃくちゃ詳しい訳ではないので、漠然と人とはみたいな。みんな悩んでばっかだなって思いました 


太田 私は小学生のときにはじめ触れたシェイクスピア作品が『真夏の夜の夢』だったんですよ。本が好きな子だったのでファンタジーとして、昔の話というよりは妖精たちと魔法のお話ってイメージで好きでした。


依田 『ガラスの仮面』っていう有名な演劇マンガがありまして、その中で『真夏の夜の夢』をやるシーンがあって、でもマンガの中では全員超ウルトラアクロバティックな劇団が野外劇をやってて、とりあえずバック転するみたいなのを見て、シェイクスピアやるにはバック転しなきゃいけないのかなって、サーカスができるようにならなきゃいけないのかなって思ってました。やっぱり演劇って大変なんだなってっていうのがファーストインプレッションですね。


稽古してみて、作品のイメージは変わりましたか?


太田 お客さんとして何回か観たことがあって、妖精チームと若者チームと職人チームの話が交互にどんどん出てくるのを観てたのが、自分がやるってなるとそれぞれの一貫したお話があるし、それぞれのやりたいことをずっと追っていくっていうのはやってみて初めてそうだよな、ずっと目標があってこういう流れでずっとやってきたっていうのがわかって面白いなと思いました。やらないと気づかなかったと思います。

依田 私は「憧れ」について考えたいなって思いました。稽古前はよくある恋のいざこざっていうイメージだったんですけど、すごく人間らしいというか、職人たちで言えば「お金がほしい」とか「いい地位になりたい」みたいなものを求める憧れもあるし、叶わないものへの憧れっていうのがあるんだろうなって思いました。

両想いになりたいし仲良くしたいけど上手くいかない、何で振り向いてくれないのっていう若者たちのものとか、結婚したいとか、厳しい決まりがあるからこそ、今って成金とかありますけど、当時ってそれはすごく難しいことだし、妖精にはなれないし王様なりたいって言ってなれるものじゃないし、そういう決まりとか世間の厳しさがあるからこそどんどん求める野望とか憧れが強くなっていくのかなって思います。


山崎 知り合いや、そうじゃなくてもいろんな人たちがシェイクスピアをやっているのを観て、この人たちはなぜシェイクスピアをやっているんだろうって思っていた訳ですね。それで自分もやってみて、人間の部分をビシッとやりたい人がやるんだなぁっていう風には思いましたね 。


 今回の座談会メンバーは劇中劇をやっていますが、今まで劇中劇をやったことはありましたか?  


山崎 意外とないですね。なのでそんな器用なことできるかなって状況ですね(笑)「劇中劇」って、概念自体がない人からしてみれば意味わかんないよね。


依田 劇やってんのに劇やるの?ってなりますもんね。だって歌中歌ってわけわかんないですよね。ダンス・イン・ダンスとか。


山崎 それできるのお芝居だけですね。ダンス中ダンスやってたらすごいですね。


依田 何だろう?洋舞の中で日舞やるみたいな?(笑)

シェイクスピアの『お気に召すまま』の最後に「この世は舞台」っていうセリフがあって、だから私は演劇やってるときが1番劇中劇やってる気がしてて。人生が演劇なのか、演劇が人生なのかわからないですけど、みんな何かしらの役を持って生きてるわけで、それは俳優以外の人も全人類が。その中でわざわざ演劇をやるっていう選択をしてるのって我ながら滑稽だなって思っちゃうときがあって、わざわざ演劇やらなくても、社会の中で学生とか、会社員とか役割が与えられてる。それでもなお演劇に役を求めに行くのって何なんだろうなぁって思うときがありますね。


山崎 お芝居をしてる時点で劇中劇やってるもんだってことですよね。


依田 劇中劇の魅力って構造の面白さじゃないかなって思っていて、大きい目で見れば人生の中で役割を与えられている人がなお役を求めて演劇をやって、その中でまた役を演じて、何構造にもなってる面白さを目指せたらいいのかなと思ってます。私が劇中劇をやるとき、なぜ人は演じたがるのかっていうところがポイントになってる気がします。


 役と、役が演じる役と2重にありますがどんな気持ちで使い分けてますか? 


太田 劇中劇をやる前に、劇中劇をやってないときの役が前提になるから、そっちをやった上でその人が劇をやろうって演じてみたらどうなるのかなって考えます。例えば、私たちは普段演劇をやっているけど物語の中の職人たちは普段演劇をやったことないからセリフをすらすらしゃべれないし、どうしたらいいんだろうって思いながらやってるんだろうなこの人たちは、と思う。それが2重3重ってことかな。


山崎 落ち着いて考えてみると私たちはすごく難しいことやってますね。2倍大変ですもんね。前提やるのも大変なのに。



依田 見せ場というか、ぜひ劇場には早めに来ていただいて、座席でぼんやりしながら待ってるとお芝居が始まったときにいつもと違う感覚で楽しめるんじゃないかと思います。 


ほかとは違う演出があるんですか?


依田 今回の作品は開演のラインがはっきりしていないので、ゆるっと劇場に来ていただいてぼんやりしながら待っていただくと日常からお芝居の世界に自然と入り込める気がします。


山崎 僕も開演前っていうことに絡めて言うと、神山という役者が、言っていいのかな最初からいてしゃべるみたいな、言っちゃいけなかったらたらここはカットしていただいて...ああいうぬるぬるした感じはすごく好きです。もしこの世に、ひとりでしゃべる神山という者を観るのが好きな人がいればいればこんなに楽しいことはないでしょうね。そんな人がこの世に何人いるのか知りませんけど。


臼杵 ここにいます!


太田 あのシーンでは私たちは裏で緊張しながら待ってなきゃいけないんだろうな。全然楽しめなくて残念(笑) 私が好きなのは山崎さんのワンマンショーですかね。めっちゃ好きなんですけどあんまり言っちゃダメかな? 


依田 ネタバレを上手く防ぐのが難しい(笑)


山崎 今のところワンマンショーが行われることだけが決まっているような状態ですよ。


シェイクスピアのあまり馴染みがない人にメッセージをお願いします。


山崎 自分もシェイクスピアライト層の名にふさわしい人物だと思うので、いいことかわからないですけど、そういう人も出てるんだっていうぐらいの軽い感じで来てくれたらと思いますね。そんなに怖いことはない。


太田 フライヤーがね。アートなものが始まるんじゃないかっていう印象を与えますけど。


依田 前衛的なイメージでね。


太田 作品は面白いから大丈夫です。 


依田 臼杵さんの演出は、恋ってなんじゃろな?っていうところに焦点を絞っていて観やすいと思います。逆に『真夏の夜の夢』をたくさん観てる人にも、臼杵さんが魅力を感じてるポイントを捉えやすい作品になっています。


太田 シェイクスピアをよく観てる人にも観てほしいし、初めての人にも観てほしい作品だなぁって思います。シェイクスピアって大昔の怖そうな人たちが書いてるのかなって思う人もいると思うんですけど、怖くないよ~ 


依田 怖くないよ~


太田 シェイクスピアの特に喜劇が好きなんですけど、人って400年前からバカなギャグ書いて、みんな400年たってもこんなバカなことで笑えるんだってことが良いなって思った。


依田 出演者やカンパニー自体に同世代が多いので、全員平成生まれだと思うんですよ。全員平成生まれの人で、平成最後の年にシェイクスピアを作るので。400年前から変わってないこともあるっていうのが平成の私たちによって証明されてる気がしているので、平成の人も昭和の人も、もしかしたら大正の方も観ていただけたらなぁと思ってます。




好きなフレーズはありますか?


依田 ヘレナとハーミアのところで、ヘレナが「何であなたはディミトリアスに好かれてるの」って言って、ハーミアが「私は必死に嫌われようとしてるの」っていうのに言い返すヘレナの言い回しが、言葉としてはすごくきれいに韻を踏んでいるんですけど、でも整っているがゆえに悲しくなるというか、全部律儀に、「精一杯顔をしかめているのよ」に対して、「私は笑顔になると嫌われるのよ」とか。 そういうリンクがいいなって思いますね。


太田 言葉遊びがいいよね。今回の臼杵版もそうだしいろんな人が訳していろんな人が言葉遊びをしてるから、いろんなバージョンで好きな作品はいろいろありますが、臼杵版という台本がこの世に増えて、楽しい言葉遊びがいっぱいあるので、お話も追いつつそういうところも拾ってもらえるとありがたい。遊びがいっぱいあって楽しいんじゃないかな。


依田 フリースタイルダンジョンみたいなところありますよね。韻を踏むって要はラップなので、韻を踏むって言うとみんなちょっと怖がっちゃうけどライムだと思っていただければ。ライム。リリックス。


臼杵 バイブスアゲめで。今回はほんとにバイブスでおしていく芝居なんで。


依田 バイブス臼杵版シェイクスピア!


臼杵 アゲアゲのバイブスで。


山崎 まあなんか、人が喧嘩してるところって面白いってことですよね。


依田 怒ってるときの人間が1番頭回ってるなって思う。


太田 かつ今回それで誰も死なないから安心して観られる。


安心安全の全年齢対象シェイクスピアですね。


太田 ほかのシェイクスピア作品は面白い言葉遊びで喧嘩しだすとすぐ殺すから。


臼杵 下ネタも上品にまとまってます。ロミジュリとか1番酷い。


太田 びっくりする。


臼杵 みんなが知ってるあのロミジュリがたぶん有名作品の中で1番ゲスい。 


太田 冒頭とかが1番酷いよね。


山崎 そうなんだ~ 


臼杵 本当に夏夢は安心安全全年齢対象。


太田 そういうところも推していきたいですね。


依田 19日昼の回は託児サービスもありますし。


太田 お子さまもぜひ!あ、託児サービスじゃ観られないじゃん。


依田 確かに。


太田 預けられちゃってるから(笑)


ありがとうございました!


太田ナツキ Natsuki Ota

俳優/krei inc.所属/早稲田大学文化構想学部卒

東京都出身

在学中から舞台を中心に俳優として活動し、学内ではパントマイム公演にもパフォーマーとして出演。2016年シアターグリーン学生芸術祭vol.10にて俳優賞を受賞。主な出演作品に、劇団柿喰う客『露出狂』(16年)、あやめ十八番『ダズリング=デビュタント』(17年)、日本のラジオ『カーテン』(17年)、など。


依田玲奈 Reina Yoda

俳優/明治大学文学部演劇学専攻卒

山梨県出身

在学中よりフリーの俳優として、舞台を中心にジャンルを問わず活動している。近年は自身の脚本、演出、企画において「身体一つで劇場へ」「わたしとあなた」をテーマに、一人芝居の上演を重ね、演劇の可能性を追求している。 主な出演作品に、monophonic orchestra『さよなら、三上くん』『サイクルサークルクロニクル』、遠吠え『ドラマティック』『凡庸』、劇団肋骨蜜柑同好会『恋の手本〜曾根崎心中〜』『愛の技巧、または彷徨するヒト胎盤性ラクトーゲンのみる夢』など。


山崎大夢 Hiromu Yamazaki

※(崎はたつさき)

俳優/元・劇団森所属/元・劇団臨月代表

 『刀狩・レオガリ・令』『TOKYO原住民』などを作演出するも、いまいち続かずに今に至る。 キングオブコント一回戦敗退。 よくピザ屋のチラシを眺める。



巻末コラム~ハムレットの劇中劇/真夏の夜の夢の劇中劇~

 劇中劇、とは。 

演劇作品の中で上演される劇のこと。 小説の中に登場する小説、アニメの中に登場するアニメ、など作中に登場する別の作品のことを総称して作中作、と呼んだりもします。マンガ『バクマン。』やミュージカル『コーラスライン』などが有名ですね。

シェイクスピア作品の中にも劇中劇モノがいくつかあります。 中でも『ハムレット』の劇中劇は突出していて、簡単に説明すると「主人公が父親殺し容疑者である叔父の前で【殺害現場によく似たシチュエーションの劇】を上演し、それを観た叔父のリアクションから容疑の真偽を確かめる。」というものです。 非常にダイナミックな劇中劇の使い方ですよね。上演される劇の内容自体、物語の中での必然性が非常に高いです。  

そして、『真夏の夜の夢』にも劇中劇が登場します。これがまた『ハムレット』とは全く違う意味で突出しています。公爵様の結婚をお祝いするために上演される『ピラモスとシスビーの残酷なる悲劇』という作品。他のシェイクスピア作品では「役者」という芝居を生業にしている人たちが演じることが多いのですが、夏夢の劇中劇を演じるのはアテネの町の職人たち。劇中の言葉を借りれば「生まれてこのかた頭を働かせたことのない」連中ですから、当然演技も演出も素人丸出し、バカバカしいことこの上ありません。本来は『ロミオとジュリエット』顔負けの悲劇のはずなのに、本人たちはいたって真剣なのに、思わず笑ってしまいます。

そこに必然性はあるのでしょうか? 私自身、戯曲を読んだり、様々なバージョンの『真夏の夜の夢』を観たりする中で、「もしかして、この劇中劇、蛇足なのでは……?」と思うことも正直ありました。しかし、読み進め、稽古していくうちにこのシーンの機能に気付きました。それはぜひ、劇場で確かめてみてください。 


  

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